ランダムアクセス性能では今でも敵なしと言われているOptane SSD
2024年現在のSSDといえば、PCIe5.0のM.2 SSDがシーケンシャルリードで約14GB/sというスピードが出て、これが最速だ!!みたいな謳い文句で賑わっていますが、あくまで連続読込のスピードに絞った話。ファイル容量が大きいファイルの読み込みや書き込みが速いってことです。つい最近までは連続読込・連続書込のスピードが速いものこそ正義!シーケンシャルリード/ライトが速ければ、パソコンの動作は全部速くなる!と思っていました。
パソコンを操作する上で、大容量のファイルの読み込みや書き込みをすることはありますが、どちらかというと、OSやアプリケーションの起動や操作などがサクサク動いて欲しいと思っています。そうなると小さくてバラバラに散らばっているファイルの読み書きが多くなります。そこを重視するとなれば、見るところはランダムアクセスの性能やスピードということになります。そういう観点でネットの情報を調べていくうちに、最近までSSD関する知識は間違っていたなと思いました。
では、ランダムアクセスが速いSSDでどれなんだろう?ということ、いろいろ調べてみると、今から6年前の2018年に発売され、第1世代は2021年に生産終了ししているIntel Optane SSD 900P/905P(PCIe3.0x4)や、第2世代のOptane X5800P/X5801P(PCIe4.0x4)になるそうです。
このIntel Optane SSDは最新のPCIe5.0x4のSSDよりも、ランダム性能は凌駕しており、ランダムリードに関しては、今だにライバル不在で敵なしだということを知りました。これは通常のSSDで使われているTLCやQLC NANDとは違い、Intel独自の3D Xpointメモリで設計されています。このことにより、NAND SSDの限界を突破したランダムリードの速さにつながっているそうです。
OptaneにはMemoryとSSDが存在している
OptaneはOptane SSDと、Optane Memoryがあり、それぞれ用途や性質が違うので、Optaneと名前がついていても同じではないので購入時は注意が必要です。Optaneメモリは元々、HDDなどの遅いストレージのキャッシュとして使うことを目的としたもので、M.2の形をしていてもストレージではありませんでした。しかし、Optane Memory H20という、ランダムアクセスが遅いNANDフラッシュメモリの弱点を補うためのキャッシュの役割をする3D Xpoinと、記憶容量としてのNANDを混載したハイブリッドSSDの製品が出ています。PCIe3.0x4で容量は512GBと1TB。
以下のページではランダムリードが140MB/s~170GB/sといい数字が出ていますが、UEFIで「VMD」を有効にし、「Intel Optane Memory and Storage Management」というソフト上で、Optaneメモリを有効にする設定が必要になります。それに比べて、手間なく挿すだけで使えて、300MB/sを超える905Pと比較すると、H20は価格が安いですが、なんとも微妙な感じがします。
いろいろなSSDのランダムリードのスピードを比較したグラフ
以下のサイトでは、様々なメーカーとのSSDと比較したベンチマークの数値をわかりやすくグラフ化されていいます。このサイトでランダムリード(4KB QD1)の数値を見てみると、1位のX5800Pをはじめ、上位はすべてOptaneで占められています。
シーケンシャルリードでは最新で最速のCrucial T705 2TB(PCIe5.0x4)がランダムリードでは置き去りになっています。Optaneの次に速いので、逆に言えば、TLCやQLC NANDの部類でランダムリードはT705が最速ということになります。
上記のグラフは以下のサイトで確認できます。
Optane SSDの速さについての参考ブログ
耐久性がスゴイ!低レイテンシで速い!速度が落ちない!動画の書き出しやゲームのロード時間が短い!など、絶賛されています。これらの記事を読むと、あなたもOptane SSDが欲しくなるかもしれません。
物欲を抑えることができずOptane 905Pを買ってみた
最速のX5800Pを買わず、なぜ905Pを買ったかというと、理由は価格です。このIntel Optane SSDは一昔前のパーツとは言え、めっちゃ高いです。X5800Pは400GB/800GB/1.6TB/3.2TBがありますが、中間の800GBでも30万円~40万円くらいします。1.6TBは60万円台、3.2TBは120万円クラス。
それに比べて905Pは少し安いです。発売当初は15万円~20万円近くしていましたが、最近は960GBの場合、5万円~10万円くらいで売られています。よって、X5800Pには手が届きませんが、905Pなら今買える限界予算ということで、アマゾンで905Pを5万円台前半の金額で購入しました。為替によって価格が毎日変わります。
Optaneを売っているサイトのリンク
905Pはアマゾンで買えます。上位モデルのX5800Pシリーズはアマゾンとオリオスペックで買えます。
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SSDの見た目とインターフェース
2.5インチサイズですが、SATAのSSDやHDDに比べて厚み15mmと、少し厚みがあります。ヒートシンクも兼ねたボディーは金属性なので、重みもあります。
SATAのような見た目のインターフェースですが、U.2と呼ばれているサーバーなどで使われている端子で別物。
U.2をM.2に変換するケーブルが付属していました。これを使ってM.2スロットに挿します。このケーブルにはSATAの電源端子も付いているので、これも電源供給として使用します。バルク品を購入した際は、ケーブルが付属していなようです。その際は、同様のケーブルか、PCIeスロットに挿す変換ボードを購入してください。
手持ちのSSDとベンチマークで比較
以下のデスクトップPCの環境に挿した手持ちのSSDをCrystal DiskMarkでスピードを計測してみました。
CPU | Intel Core-i7 14700KF 3.4GHz |
RAM | DDR5-6000MHz 128GB(32GB×4枚) |
マザーボード | ASRock Z790 Steel Leegend Wi-Fi |
OS | Microsoft Windows11 23H2 64ビット |
Fanxiang S880 1TB(PCIe4.0x4)
PCIe4.0の中ではアマゾンで1万円ちょうどくらいで、よくわからないメーカーですが、評価もよく一番安かったので買ったSSD。CPU直結のM.2に挿して、Windowsのシステムドライブとして使用しているもの。シーケンシャルリードは7GB/sを越えられないものの、シーケンシャルライトと共に6GB/sを超えており、PCIe Gen4の中では速いほうだと思いますが、ランダムリード(Q1T1)は100MB/sも越えられていません。
Nextorage SSD NEM-PA1TB(PCIe4.0x4)
ソニー系列の国産SSD。PCIe4.0でチップセット接続のM.2スロットに挿して、データドライブとして使用しているもの。これも連続読込はGen4らしく、7GB/s付近でそこそこの速さだと思いますが、ランダムリード(Q1T1)は更に遅い61MB/s…。
Crucial T705 2TB(PCIe5.0x4)
これは手持ちではなく、外部のサイトから拾ってきた画像。さすがGen5でシーケンシャルリード/ライトは10GB/sを超える桁違いのスピード。しかし残念ながらランダムリード/ライト(Q1T1)に関しては1万円台のGen4のSSDとあまり変わりません…。
Gen5のSSDは、種類も少ないし、価格も高く、熱が以上に高いので、ヒートシンクやファンが必要であったりします。しかも、連続して読み書きすると高熱による性能の不安定さが出てきます。具体的には80℃を超えたあたりで、サーマルスロットリングと呼ばれる熱を抑えようとする機能が働きます。それに伴い、スピードが6000MB/s~2000MB/sあたりまで下がるそうです。そう考えるとコスパが悪いです。それなら、発熱も抑えられ、動作も安定しているGen4のSSDでも充分かな?と思ってしまいます。
Intel Optane 905P 960GB(PCIe3.0x4)
さて、本題で本命のSSD。チップセット接続のM.2スロットに挿した状態で計測したところ、シーケンシャルリード/ライトは共に、普通のGen3 SSDと変わりませんが、ランダムリード(Q1T1)は圧倒的に速いですね。Crucial T705 2TB(PCIe5.0x4)と比べて単純計算では約3.2倍速いです。赤い彗星のシャアか!?
Crystal DiskInfoで見た初回電源投入時の状態。既に電源投入回数が3回となっていました。製造時のテストかな?
CPU接続のM.2スロットで再計測
Windows11をAcronis True Imageでクローンコピーし、CPU接続のM.2スロットに挿し、システムドライブとして起動した状態で改めて計測しました。チップセット接続と比べてランダムリード(Q1T1)の値が10MB/s速くなりました。あともう少しで300MB/s。Crucial T705 2TB(PCIe5.0x4)と比べて単純計算では約3.3倍速いことになりました。
1GiBの計測値
64GiBの計測値
ファームウェアをアップデートして再度計測
Intel Memory and Storage Toolでファーウェアを E2010480 → E2010650 にアップデートしてみました。
何が改善されたのかわかりませんが、速度の向上を期待しましたが、特に変化はありませんでした。
OSやアプリケーションの起動は速いのか?
ベンチマークの数値的にはランダムリードが他の追随を許さないほど速いのはわかりましたが、「HDD → SSD」「SATA SSD → NVMe SSD」 に移行した時のような、トキメキや感動するほどの体感速度は得られるのでしょうか?
ストップウォッチでWindows11の起動や、よく使うOffice系、Adobe系アプリケーションの起動時間を計って数値化してみたいと思います。手動で計るので正確ではありませんのでご了承ください。
それと、Windowsの起動については、PCIeスロットにSATAポート増設カードを挿しているので、そのカードを認識する時間が何秒かわかりませんが、いくらか含まれています。そのせいで少し遅くなっていると思われます。
起動までの時間を計測
アプリケーション | Fanxiang S880 1TB(PCIe4.0x4) | Intel Optane 905P 960GB(PCIe3.0x4) | 短縮された時間 |
Windows11(電源投入からデスクトップが表示されるまで) | 34.67秒 | 33.25秒 | 1.42秒 |
Windows11(ASRockロゴの表示からデスクトップが表示されるまで) | 21.12秒 | 18.52秒 | 2.6秒 |
Chrome/Edge | 1秒 | 1秒 | 0秒 |
Excel | 1.12秒 | 0.85秒 | 0.27秒 |
Word | 1.37秒 | 0.92秒 | 0.45秒 |
PowerPoint | 1.24秒 | 0.82秒 | 0.42秒 |
Photoshop | 6.19秒 | 5.78秒 | 0.41秒 |
Illustrator | 5.31秒 | 5.24秒 | 0.07秒 |
Premiere Pro | 4.43秒 | 4.28秒 | 0.15秒 |
正直、劇的な差はなく残念な気持ちです。ちょっと速くなっていますが、誤差の範囲ですね。コストをかけて購入した割にはGen4のSSDと差はありませんでした。こうやって見ても、PCIe4.0x4のSSDで充分な気がしなくもないです。
アプリケーション操作のスピード感は?どうなの?
- Chrome/EDGEでウェブページのレンダリングが速い気がする
- その他、実験中。
905Pを使ってみて感じたところ
良いところ
- 耐久性がめちゃめちゃ高い
- 温度が上がってもパフォーマンスが下がることがない
- レイテンシが短い
- ランダムリードのスピードは群を抜いて速い
- アプリケーションの動作は速くなった気がする
残念なところ
- ファイルコピーは遅い
- Windowsやアプリケーションの起動は一般的なSSDとあまり変わらない
- 温度が一般的なNVME SSDと比べて、平常時で10度くらい高い
まとめ
劇的なスピード感は感じないものの、いいところはたくさんあるので、このまま905Pをシステムドライブとして使い続けようと思います。今回の件で、最新で公称値がメチャメチャ速いと謳うSSDは疑うようになりました。ファイルコピーが速いだけで、一定時間を超えて熱が出るとしょぼいスペックで動作するものが多いというこがわかり、SSDの目利き力がアップしたと思います。現行でX5800Pシリーズ(PCIe4.0)が販売されているので、これからもOptane SSDから目が離せません。