Victoriaとは
Victoriaは、ウクライナのプログラマー、Sergei V. Kazansky氏によって開発されたHDDメンテナンスと診断のためのフリーソフトウェアです。Windows環境で動作し、HDDの健康状態をチェック、不良セクターの検出・修復、リマッピング(代替セクターへの割り当て)、およびSMART情報の確認が可能です。ディスクの劣化を早期に発見し、HDDの寿命を延ばすための実用的なツールとして知られています。
SATA/SASハードディスクやNVMEのSSDにも対応しています。ソフトはインストール不要のポータブル版として、実行ファイルを直接起動して使うタイプなので、USBメモリに入れて使用することもできます。
ダウンロード方法
以下の公式サイトのトップページの最下部にあるリンクから最新版をダウンロードできます。
4種類のTest&Repairモード
1. Ignore モード
- 機能: スキャン中にエラーが発見されても、特にアクションを行わずにスキャンを続けるモードです。
- 用途: 単純にHDDのエラー箇所を把握したい場合に使用します。このモードでは修復を行わず、エラーがどこにあるかを確認するための診断ツールとしての役割を果たします。
2. Erase モード
- 機能: 発見したエラーセクターを消去(ゼロフィル)するモードです。エラーのあるセクターに対して「0」を書き込み、データを消去することで論理エラーを除去します。
- 用途: 読み込みエラーが多い場合や、データの上書きを通じてエラー箇所を修復したい場合に使用します。ただし、データが完全に消去されるため、大事なデータがある場合は事前にバックアップが必要です。
- 注意点: 論理的な不良セクターの修復には効果がありますが、物理的な損傷がある場合には効果がありません。
3. Remap モード
- 機能: 不良セクターをHDDの代替セクター(リマップ)に置き換えるモードです。HDDのファームウェアが自動的に予備のセクターに割り当てて、以後は代替セクターにアクセスするようにします。
- 用途: S.M.A.R.T.機能で「Reallocated Sectors Count」などに増加が見られ、物理的な損傷が疑われる場合に適しています。代替セクターを活用して問題箇所を回避することで、HDDの運用が延長できる場合があります。
- 注意点: リマップ機能はディスクの空き代替セクター数に依存しているため、代替セクターが不足している場合は効果がないこともあります。
4. Refresh モード
- 機能: セクターのデータを読み出し、再度書き込みを行うことで「リフレッシュ」するモードです。セクターが遅延や読み込み不良を起こす前にエラーが修正できる場合があり、セクターの「読み書き耐性」を改善することを狙います。
- 用途: ディスクがエラーを起こす前兆として遅延が見られる場合に使用し、セクターを再書き込みすることで安定性を高められる可能性があります。
- 注意点: Refreshは物理的な損傷ではなく、ソフトエラーやデータ読み出しエラーの改善を目的としているため、物理的な損傷には効果がありません。
使う順序はErase→Remapの順が良い
Erase → Remapの順番で実行することで、論理エラーの修復を先に試みた後、物理的に損傷したセクターをリマップすることが理想的な順番です。逆に、Remap → Eraseの順番で行うと、重複する処理が発生しやすく、無駄なHDDの消耗につながる場合があるため、一般的には推奨されません。
Remap→Erasegが良くない理由
- Remap後にEraseを行うと、Remapで代替セクターに割り当てられた不良セクターに対して、さらにゼロフィル(データを「0」で上書きする操作)が行われます。
- Remapで再割り当て済みのセクターには、物理的な損傷があることが多いため、Eraseで再度アクセスしようとしても効果がない場合があります。
- 結果として、Remapで代替セクターへの置換が完了したセクターは上書きされず、意味が重複することになります。この場合、作業の重複によりディスクに余計な負荷がかかる可能性もあるため、一般的には非推奨です。
Erase→Remapが良い理由
- Eraseを先に実行し、セクターを「0」で埋めることで、論理的なエラーを修復できる可能性があります。Eraseによって論理エラーが解消されると、物理的な損傷のないセクターは正常にアクセス可能な状態になることがあります。
- その後、必要に応じてRemapを実行し、物理的に修復できなかったセクターだけを代替セクターにリマップすることで、エラーセクターを効率的に処理できます。
- この順序が最も効率的であり、まず論理エラーの修復を試み、最終的に物理的な不良セクターを回避するためにリマップを使用することで、HDDの負荷を最小限に抑えながら修復を行うことができます。
Ignore→Erase→Remapが更に良い?
一般的に、Ignoreを先に実行し、ディスクの全体的な健康状態と不良セクターの場所を把握してからEraseやRemapを実行することが推奨されます。これにより、効率的で負担の少ない修復が可能になり、ディスク寿命を保ちつつ、不良セクターの処理に必要な時間と労力を最小限に抑えられます。
使用感
すべての領域に00
を書き込むEraseモードは、DISKPARTコマンドclear allと比べて遅延セクターがあってももたつくことなく書き込むので、セクターの途中で止まったりしませんでした。非常に軽快な動作をするので、2TB以上ある大容量のドライブでも、時間はかかりますがストレスなく使用できそうです。
HDD RegeneratorとVictoriaの違い
不良セクターの修復で有名なHDD Regeneratorという有料ソフトがあります。それと比べてどうなんだろうと調べてみたところ、不良セクターの修復という意味ではどちらも同じような感じに見えますが、性質は違うようです。
HDD Regenerator: 主に物理セクターを再生成する試みを行い、磁気的な不良セクター(読み取りが不可能な場合も含む)を修復するように設計されていますが、完全な修復ができない場合もあります。また、HDD自体のファームウェアを変更するわけではないため、不良セクターがリマップされるわけではありません。
Victoria: Victoriaは、ファームウェアの管理領域にアクセスして、HDDが不良セクターとして記録したセクターを新しいセクターにリマップすることが可能です。これはHDDの管理システムを変更する操作であるため、再割り当てが成功すれば、不良セクターへのアクセスは完全に回避され、エラーが発生しなくなります。
違いのまとめとして、Victoriaを用いることで、HDD Regeneratorでは対処できなかった不良セクターもリマップにより対応できる可能性がありますが、リマップの成功はHDDの状態によります。物理的に損傷したセクターや、予備セクターが不足しているディスクではリマップができないこともあるためです。