80年前の水泳の心得「練習十則」が素晴らしい
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令和元年(2019年)の現在より80年前の昭和14年(1939年)5月30日に発行された日本水上競技連盟の機関雑誌「水泳 第64号」に掲載されていた「練習十則(水泳十則)」が素晴らしい。
山口県生まれで法学者であった初代日本水上競技連盟会長である、末弘厳太郎(すえひろ いずたろう)氏が選手に残した言葉だそうです。
水泳をしている者として、とても腑に落ちる言葉だと思ったのでメモしておきます。
練習十則
第一則 先ず正しいトレーニングによって体を作れ。体を作ることを忘れて、いたずらに技巧の習得に努めても決してタイムは上がらない。
第二則 体と泳ぎを作ることを目的とする基礎学習と、レース前の調子を作ることを目的とする練習とを混同してはならぬ。レース前になって、むやみにタイムばかりを取るような練習は、最も悪い練習である。肉体的にも、精神的にもいたずらに精力を消耗するだけのことである。
第三則 むやみに力泳するよりは、水に乗る調子を体得する事が何よりも大切である。
第四則 スタートとターニングとの練習は、泳ぎそのものの練習よりも大切だと思わなければならぬ。
第五則 一つ一つのストロークを失敗しないように泳ぐことが、最も良いタイムを得る方法である。
第六則 レース前の練習に当っては毎夕毎晩、体重を測れ。もしも朝の計量において体重の回復が十分でないことを発見したならば練習の分量を減らさなければならない。
第七則 スランプは精神よりはむしろ体力の欠陥に原因していると思わねばならぬ。いたずらにあせるより、思い切って二三日練習を休む方がよろしい。
第八則 レース間際に体を休ませるつもりで力泳を控えることは非常に危険である。体を休ませるために、練習分量を減らしたければ、力泳をせしめつつ、その分量を減らすようにせねばならぬ。休ませるつもりでフラフラ泳がせると調子がくずれてしまう。
第九則 あがる癖のある選手にいくら精神訓話を与えても、何もならない。いかなる場合にも体を柔くして、水に乗って泳げるように徹底的に練習させ、癖づけてしまうことが何より大切である。
第十則 良き練習は良きコーチによってのみ行なわれ得る。しかしコーチにのみに頼って自ら工夫することなき選手は上達しない。
戦前なのか戦後なのかわかりませんが、その頃の昭和14年(1939年)に発表されたものにしては、現代に通じるものがあり時を経ても本質的な部分は色褪せた感じがありません。特に七、八、九則を見ると精神的な部分に触れており、「昔=根性論」というイメージなのですが、この部分は現代的であり、先見の明がある方だったのかなと思いました。
水泳に限らず、他のスポーツや日常生活にも取り入ることができる内容ではないでしょうか。